<美味しい温度は>
お燗にして風味がアップするお酒を「燗あがり」する酒、とも言います。
一般的に、旨味や酸味が多く、味のしっかりしたボディの強いお酒が、
燗して美味しいとされています。反対に香りを楽しみたい大吟醸酒や、
フレッシュさを味わいたい生酒などは、常温や冷やのほうが、
持ち味を殺さず美味しくいただけます。
お酒の魅力を最大限引き出すために大切なのは、そのお酒を知ること。
お酒が最も輝く温度を見つけてあげることです。
ひとくちにお燗酒といっても、温度はさまざま。
熱燗といっても、煮立ったように熱いお酒ではないのは見ておわかりの通り。
あまり温度を高くするとお酒の味のバランスが崩れてしまいます。
濃醇なタイプのお酒は比較的高い温度(上燗や熱燗)でも大丈夫ですが、
シャープで淡麗なタイプのお酒は人肌燗やぬる燗程度で楽しむのがおすすめです。
ちょっと通の楽しみ方は少しづつ違う温度の燗酒を召し上がってみてください。
同じお酒のはずなのに、味わいがそれぞれの温度で変化する様を楽しめます。
人肌で香り立つ芳香、熱燗にして深くなる味わい。お気に入りの美味しさを探してみるのも面白いものです。
<燗酒は体にも心にも優しい>
お燗はからだにやさしい飲み方です。冷酒はアルコールの吸収が遅く、
途中で急激に酔いがまわります。酔ってない、酔ってない、と油断していると、
急激に酔いがまわって驚いたこともあるのでは。
一方、お燗酒はアルコールの吸収が早く、飲んだら飲んだ分だけ酔いがまわります。
つまり、酔いの度合いを自分でチェックでき、飲み過ぎ防止の効用もあるということ。
だから、からだに負担をかけません。
お燗酒は口当たりも滑らかに、一杯、一杯また一杯と盃をかさねるごとに、
柔らかに、ゆるやかに、ゆったりと酔いを身体にめぐらせ、凍えた身も心も優しく溶きほぐしてくれるのです。